用語解説【曹全碑】 | クラウド書展

書道の華、曹全碑:優美で流麗な筆致に迫る

書道の世界には、数多くの名碑が存在しますが、その中でもひときわ優美で流麗な筆致を誇るのが「曹全碑(そうぜんひ)」です。今回は、曹全碑の魅力に迫り、その歴史的背景や書風の特徴、そして書道界に与えた影響について解説いたします。

曹全碑とは

曹全碑は、後漢時代に建てられた石碑で、正式名称は「漢郃陽令曹全碑(かんごうようれいそうぜんひ)」と言います。郃陽令(ごうようれい)とは、現在の陝西省郃陽県にあたる地域の長官のことで、曹全という人物の功績を称えるために建てられました。碑文は延熹八年(165年)に書かれ、萬暦初年(1560年代)に再び世に現れるまで、長らく人知れず土中に埋もれていました。

歴史的背景

後漢時代は、政治の腐敗や外戚・宦官の権力争いが激化し、社会不安が増大していました。そのような時代背景の中、曹全は郃陽令として地域住民のために善政を行い、その功績が石碑に刻まれ、後世に伝えられることとなりました。曹全碑は、当時の地方官吏の善政を伝える貴重な史料としての側面も持ち合わせています。

書風の特徴:端正で流麗な美しさ

曹全碑の最大の特徴は、その端正で流麗な書風です。隷書体で書かれており、字形は整っており、左右対称に近いものが多く見られます。筆画は細く、力強いというよりも、優雅でしなやかな印象を与えます。特に、波磔(はたく:払い)と呼ばれる、横画の右端を跳ね上げる部分が美しく、曹全碑の書風を特徴づける要素の一つとなっています。

曹全碑の書風は、「秀麗」という言葉で表現されることが多いです。字形が整っているだけでなく、筆画の運びも滑らかで、全体として上品で洗練された美しさがあります。また、字間や行間にもゆとりがあり、ゆったりとした空間が、より一層優雅さを際立たせています。

書道界への影響

曹全碑は、その発見以降、多くの書道家に影響を与えてきました。特に、清朝時代には、碑学派と呼ばれる、古典の石碑を重視する書風が盛んになり、曹全碑はその中心的な手本として用いられました。

曹全碑の書風は、現代の書道家にも受け継がれており、臨書(りんしょ:手本を見ながら書くこと)を通して、その美しさを学ぶことができます。曹全碑を学ぶことで、隷書体の基礎を習得できるだけでなく、文字の美しさや表現力を高めることができると言われています。

曹全碑を楽しむポイント

曹全碑を鑑賞する際には、以下のポイントに注目すると、より深くその魅力を理解することができます。

  • 字形全体のバランス: 各文字の形が左右対称に近いかどうか、全体のバランスが整っているかどうかに注目してみましょう。
  • 筆画の太さ: 筆画の太さが均一であるか、強弱がどのように表現されているかに注目してみましょう。
  • 波磔の美しさ: 波磔がどのように跳ね上げられているか、その角度や形に注目してみましょう。
  • 字間・行間の余白: 字間や行間の余白が、文字全体の印象にどのように影響を与えているかに注目してみましょう。

まとめ

曹全碑は、後漢時代の善政を伝える史料としての価値を持つだけでなく、書道史上においても重要な位置を占める名碑です。その優美で流麗な筆致は、見る者を魅了し、書道の世界へと誘います。ぜひ、曹全碑に触れ、その奥深い魅力をご堪能ください。そして、曹全碑を通して、書道の歴史や文化、そして文字の美しさを感じていただければ幸いです。



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