用語解説【鮮于枢】 | クラウド書展

波瀾万丈の生涯と革新的な書風:鮮于枢の世界

鮮于枢(せんうすう、1246年 - 1302年)は、中国元代の著名な書家です。字は伯機(はくき)、号は困学民(こんがくみん)などを用いました。趙孟頫(ちょうもうふ)と並び称され、「二妙」と称されることもあります。彼の書は、伝統に深く根ざしながらも、大胆で自由奔放な作風が特徴であり、元代書壇に大きな影響を与えました。

波乱に満ちた生涯

鮮于枢は、モンゴル帝国の侵攻により混乱した金朝末期に生まれました。幼い頃から学問に励み、優れた才能を発揮しましたが、政情不安の中で苦難の時代を過ごしました。元の時代になると、中央政府に仕え、翰林侍講学士(かんりんじこうがくし)という要職を務めましたが、政治的な駆け引きに巻き込まれ、失脚と復帰を繰り返しました。

このような波乱に満ちた生涯は、彼の書風にも影響を与えていると考えられます。苦難を乗り越えてきた彼の精神は、作品に力強さと深みを与え、見る者を魅了します。

伝統と革新の融合:鮮于枢の書風

鮮于枢の書は、王羲之(おうぎし)や顔真卿(がんしんけい)といった古典の名筆を深く研究した上で、独自の解釈と表現を加えたものです。楷書、行書、草書、いずれの書体にも精通していましたが、特に評価が高いのは行書と草書です。

彼の行書は、王羲之の流麗さと顔真卿の骨太さを兼ね備えており、力強くも洗練された美しさを感じさせます。筆運びは大胆で、時に筆勢が途切れることなく、流れるように文字が連綿と続いていきます。

草書においては、その奔放さが際立ちます。筆の勢いを最大限に活かし、文字を極限まで簡略化することで、抽象絵画のような表現にも挑戦しています。しかし、その根底には古典への深い理解があり、無秩序な印象は受けません。

彼の書は、当時の書壇において大きな反響を呼びました。伝統的な書法を墨守する人々からは批判も受けましたが、その革新的なスタイルは、多くの書家たちに刺激を与え、元代書壇の多様性を促進しました。

鮮于枢の代表作

鮮于枢の代表作としては、以下のような作品が挙げられます。

  • 石鼓歌(せっこか): 唐の詩人、韓愈(かんゆ)の石鼓歌を題材とした作品。力強い筆致で、石鼓文の荘厳さを表現しています。
  • 杜甫詩巻(とほしかん): 唐の詩人、杜甫(とほ)の詩を揮毫した作品。詩の内容に合わせて、行書と草書を使い分けており、詩情豊かな表現が魅力です。
  • 韓愈送李愿帰盤谷序(かんゆそうりげんきばんこくのじょ): 唐の文人、韓愈の文章を揮毫した作品。緩急自在な筆運びで、文章のリズムと流れを見事に表現しています。

これらの作品は、鮮于枢の書風の特徴をよく表しており、彼の芸術的才能を余すところなく伝えています。

後世への影響

鮮于枢の書は、元代以降の書壇に大きな影響を与えました。彼の革新的な書風は、趙孟頫をはじめとする多くの書家たちに影響を与え、元代書壇の多様性を促進しました。また、明代以降の書家たちも、彼の書を学び、独自の表現を追求しました。

鮮于枢は、伝統を尊重しながらも、大胆な表現に挑戦し、独自の書風を確立しました。彼の作品は、今もなお多くの人々を魅了し、書の世界に新たな可能性を示唆し続けています。彼の波瀾万丈な生涯と革新的な書風は、書道史において重要な位置を占めており、後世に語り継がれるべき存在です。



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